教室紹介

研究内容

消化管機能グループ

消化管機能グループでは、内圧検査、インピーダンス・pH検査、内視鏡検査により疾患の病態の検討を行っています。食道の機能検査を主に⾏っていましたが、内視鏡下胃機能検査および直腸肛門内圧検査を開始しました。今後は食道のみではなく全消化管の機能性疾患に対する研究を行って参ります。

研究

・GERD関連研究

  1. 新規酸分泌抑制薬であるボノプラザンのPPI抵抗性逆流性食道炎に対する治療効果
  2. 軽症逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症 (NERD) に対するon demand療法の治療効果
  3. PPI及びボノプラザン抵抗性NERDの病態
  4. 高齢者のPPI抵抗性逆流性食道炎患者の臨床的特徴
  5. 食道裂孔ヘルニアの診断(内圧と内視鏡診断による違い)
  6. High-resolution manometry (HRM) を用いた好酸球性食道炎患者、全身性強皮症患者の食道運動機能
  7. ジャックハンマー食道の治療法別による臨床的特徴
  8. 早期アカラシア症例の内視鏡像、食道アカラシア診断に用いるStarlet (HRM) によるintegrated relaxation pressureカットオフ値の妥当性
  9. 難治性逆流性食道炎患者における唾液分泌能

・胃機能関連

  1. 内視鏡下胃機能検査法の開発

・直腸肛門関連

  1. 慢性便秘症患者に対する直腸肛門機能

内視鏡診断治療グループ

日本人の死因のトップはがん死である。がん死を減らすためにはがんの早期発見早期治療が必須であり、大きな国民的課題である。日本人のがん罹患の第1位、3位となっている大腸癌や胃癌などの消化管癌は取り分け重要度の高い癌であり、その診断治療に果たす消化器内視鏡の位置づけは年々⼤きくなっている。更に、超高齢化に伴いQOLを維持できる低侵襲内視鏡治療の発展・普及は喫緊の課題である。

研究

・内視鏡診断

  1. optical biopsyの実現
    消化管癌の内視鏡診断では、optical biopsy(生検病理診断に匹敵する光学内視鏡診断)の実現が大きなテーマとなっています。500倍の拡大機能をもつEndocytoscopy(ECS)は生体粘膜の細胞を直接内視鏡で観察可能な光学式超拡大内視鏡であり、optical biopsyの実現できるkey modalityです。我々はこれまでECSによる胃癌診断能基準を世界で初めて提案し、ECS異型診断の有用性を報告してきました。現在、実臨床への応用しながら、ECS診断法の改良、病理部門との共同による癌組織型予測・AI診断など先進的な研究を行っています。
  2. 早期胃癌の人工知能(AI)補助内視鏡診断の実用化
    医療界においてもAIの応用が普及しつつあります。大量の内視鏡画像をAIが学習し、極めてスピーディに診断を提示することで内視鏡医の診断補助に役立つことが期待されています。大腸ポリープ・大腸癌のAI内視鏡は実用化されていますが、早期胃癌のAI内視鏡は開発途上です。探索的試験を経て、早期胃癌に対するAI 補助内視鏡の有用性を明らかにするため多施設共同特定臨床研究を主施設となって施行しています。またECSによる胃癌AI内視鏡診断の研究も行っています。
  3. 粘膜下腫瘍に対する内視鏡診断・組織採取
    消化管粘膜よりも深部に位置する粘膜下腫瘍は内視鏡診断・組織採取ともに難しく、特に小さな病変に対する正確な診断は困難とされています。我々は超音波内視鏡にて病変の形態学的特徴に注目するとともに、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)や粘膜切開生検によって確実に病変組織を採取し、より正確な診断法を確立することを目指しています。

・内視鏡治療

  1. 内視鏡的手縫い縫合法(Endoscopic hand suturing: EHS)の確立と普及
    内視鏡専用の持針器を用いて消化管の中で外科用縫合糸を操り粘膜縫合や消化管壁全層の縫合を行う手技を考案し、確実な消化管出血予防や新しい内視鏡手技の確立と普及を目指しています。臨床での実行可能性評価を経て、現在胃ESD後出血高危険群に対するEHSの有用性に関する多施設共同第二相試験を遂行中です。同時に、EHSの他疾患への適応拡大を目的とした探索的臨床研究を行っています。
  2. 胃粘膜下腫瘍に対する安全で確実な内視鏡的全層切除法(EFTR)の開発
    比較的小さな胃粘膜下腫瘍は、内視鏡で全層切除し内視鏡で切除部を閉鎖することで体表に傷をつけることなく病変を局所切除することが可能となります。我々は消化器外科の協力のもと、安全で確実なEFTR の確立を目指しております。
  3. 経口内視鏡下筋層切開術(POEM)の安全性向上と食道アカラシアの病態解明
    食道アカラシアに対するPOEMにおいて、気腹によって上昇する腹腔内圧をモニタリングすることで術中も安全に手技が継続できるのではと考え、その手段の基礎的検討を行っています。また、POEM中に採取する食道筋層の生検検体を用いた病理学的解析を行い、未だ原因不明とされている食道アカラシアの病態解明を目指しています。
  4. 大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の安全性向上と偶発症対策
    ESDの中でも難易度が高いとされている大腸ESD において、治療の難易度に直接影響しうる「病変の大きさ」をより正確に推定する方法を検討しています。また、病変切除部の粘膜閉鎖による術後出血および遅発性穿孔予防の確立とその有効性評価を行っています。
  5. 3D内視鏡のESDなどの治療内視鏡への応用
    ロボット外科治療分野では3D内視鏡が実用化され、細密な治療手技に3Dが必須なことが実証されています。この3D内視鏡を消化管軟性内視鏡に導入すべく、prototype 3D内視鏡を用いて基礎的・探索的研究を世界に先駆けて行ってきました。次世代3D軟性内視鏡が開発中であり、今後その有用性を検討し、実用化を目指します。

化学療法グループ

化学療法は手術、放射線治療とならんで、がん治療の中⼼的な柱の1つです。高齢化社会で、がん患者は急増しており化学療法の重要性は非常に高まってきています。我々は化学療法がより安全に有効に施行できるように、研究に取り組んでいます。

研究

  1. 高齢膵癌化学療法の研究
    現在増加している膵臓癌も高齢発症例が多い現状があります。
    膵癌の有力な化学療法にFOLFIRINOXという強力なレジメンがありますが、この治療法が高齢症例にも安全で有効性があるのかどうかという検証を行っています。
  2. 切除不能小腸腺癌化学療法の研究
    小腸腺癌は希少疾患であり、切除不能小腸腺癌に対する化学療法の標準治療はありません。
    我々は大腸癌で標準治療として使用されているmFOLFOX6レジメン治療を切除不能小腸腺癌の1次治療として行い、その効果や有害事象の検討を行っています。
  3. 進行胃癌臨床的分類作成の研究
    胃癌の遺伝子異常は多彩であると考えられています。全ての遺伝子異常の総合的な表現型として肉眼形態や転移形態が決定されていると考えると、進行胃癌が、その表現型からいくつかのパターンに分類することができれば、その分類パターンに応じた⼀群の遺伝子異常パターンが存在する可能性があります。本研究では、まず、進行胃癌の発生部位、肉眼的形態、転移形態の調査を行い、進行胃癌の表現型がいくつかのパターンに分けられるのか否かを検討します。将来的には、各分類群の遺伝子異常の評価や、化学療法の有効性の評価などにつなげていければと思います。
  4. 高腫瘍量切除不能大腸癌に有効な化学療法治療戦略の研究
    切除不能大腸癌の化学療法は非常に進歩しているが、高腫瘍量大腸癌の治療後の予後は非常に厳しいままです。我々は、高腫瘍量と非高腫瘍量症例の治療経過を比較検討することで、高腫瘍量の治療経過の特徴を見出し、そこから、高腫瘍量切除不能大腸癌に対し、最も適切であろう治療計画を推定する研究を行っています。
  5. 多施設共同試験への参加
    東京がん化学療法研究会(TCOG)に所属しており、現在、「化学療法未治療の高齢者切除不能進行・再発胃癌に対するCapeOX療法の第 II相臨床試験」の多施設共同試験に参加しています。

胃グループ

研究

  • ・胃・十二指腸の機能性疾患である機能性ディスペプシアの臨床研究および、IBS-Cに対する臨床研究
  • ・ESD症例のH. pylori陽性胃炎患者におけるCOX-2のSNPに関する研究
  • ・消化器癌における癌幹細胞表出マーカーの発現におけるCOX-2の役割

その他、早期慢性膵炎の疫学調査に関する厚生労働省難治性疾患研究班に属し、肝臓グループとともに超音波内視鏡を用いた臨床研究を行っている。

大腸・小腸グループ

大腸班の臨床部門では炎症性腸疾患・大腸憩室出血、憩室炎の治療に関する研究と、小腸疾患の研究を主に行っています。

研究

・小腸部門:

小腸検査に関しては、カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡を導入し、国内有数の小腸内視鏡検査施設となっています。カプセル内視鏡は、最新テクノロジーによって開発されたカプセル型の小型カメラを口から飲み込むだけで小腸が検査できる、被験者の負担が非常に少ない優れた検査です。当施設は1200例を超える検査を実施して国内トップクラスの施行数です。北総病院の藤森病院教授は読影法セミナーなどを通して他施設に指導しています。また、ダブルバルーン内視鏡は全小腸を内視鏡観察しながら止血術や組織検査、さらにはポリープ切除術や狭窄拡張術などの処置を行うことのできる優れた検査です。この検査も当施設では1000例近く行っており、国内有数の施行数となっています。三井講師、⽥中講師が他施設に検査指導することも多く、指導施設として広く認知されています。これらカプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡を用いた研究で、⼀流誌を含む15本程度の英文論文を発表しています。

・大腸部門:

大腸部門では、大腸内視鏡による大腸ポリープの切除、早期大腸がんの粘膜切除術・粘膜下層剥離術などの内視鏡的診断・治療中を中心に行っています。これらの診療により、内視鏡専門技術習得を目指す医師の技術向上、専門医取得を目指しています。また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)の治療にも取り組んでいます。現在、潰瘍性大腸炎患者約150例、クローン病患者約60例を診療しています。患者数は多いとは言えませんが、プロバイオティクスなどを応用した治療研究を海外の専門誌に発表するなど、治療のみならず研究活動も行っています。近年では、大腸憩室出血・憩室炎の治療・予後を中心に症例を集積し、研究発表も行っています。

肝胆膵グループ

研究

・ウイルス性肝炎の臨床研究

C型慢性肝炎の治療の進歩はめざましく、現在インターフェロンを使用しない内服薬である直接作動型抗ウイルス薬(DAA)が主流であり、非常に高い有効性を認めている。日本医科大学肝臓グループとしては積極的にこの治療を導入しており、また医師会や患者会を通じて啓発活動も行っている。全国でも常にトップクラスの症例数を経験しており、肝臓臨床研究グループでは、実臨床におけるC型慢性肝炎の治療成績を様々な角度から解析し国内外の学会発表や英文論文の執筆活動をしている。7年連続国際学会(米国肝臓病学会、欧州肝臓学会、アジア太平洋肝臓学会など)に肝炎の研究成果を発表しており、国内でも数多くの研究成果を報告している。英文論文もC 型肝炎関連で当教室よりこれまで30 編以上執筆している。
さらに現在、日本医科大学付属病院を中心として、国内の主要な肝臓専門施設との多施設共同研究も実施中であり日本医科大学が中心的な役割を担っている。
また日本医科大学としてC型慢性肝炎の5つの新薬の国内第Ⅲ相試験に参加した。

・難治性腹水に対するバゾプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)を用いた治療戦略

当科は難治性腹水、難治性食道静脈瘤に対して、高度先進医療として経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を、1992年の導入以来210例に行っており、日本で最多の症例経験を有する施設である。特に薬物療法で改善しない難治性腹水に対し、半年間の観察では約80%に改善を得ている。しかしながら高度先進医療の適応でなくなり、現在、限られた症例にしか行うことができない。そのような中、難治性腹水に対するバゾプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンが2013年より保険適応となって、わが国における肝硬変の腹水治療戦略は大きく変化した。ループ利尿薬は優れた利尿効果を示すが、その⼀方で大量に使用すると腎機能低下をきたすことがあるため、腎機能が悪化する前にトルバプタンを導入した方が良いと考えられるが、未だそのエビデンスはない。そこで、従来の利尿薬との併用の方法やどのようなタイミングでトルバプタン使用したらよいか等、今後検討していき、腹水患者に対するトルバプタンの効果や限界を明らかする予定である。

・胆道鏡(Spy Glassシステム)を用いた胆管疾患の診断、治療

胆道鏡は胆管狭窄や腫瘍性病変を直接観察し、NBIや直視下生検を行うことが可能であるため、胆道疾患の診断に有用である。また、除石困難な総胆管結石症に対しても結石を確認しながら砕石を行うことが可能であるなど、治療⾯でもその有用性が期待されている。当科ではSpy Glassシステムを用いて、さらなる診断能や治療成績の向上、新たな治療法の開発等の検討を行っている。

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